タッチアップ(レーシックによる白内障手術後の屈折矯正)
白内障手術をしたのに「思ったほど視力が回復していない」と感じることはありませんか?
そのような方に、ぜひ知って頂きたいのが「タッチアップ」というレーシック治療です。
手術後に残った近視・遠視・乱視の症状を、大きな負担なく改善します。
本記事では、タッチアップの目的や効果、眼内レンズ(IOL)交換との違いなどについて解説します。

順天堂大学医学部を卒業後、大学病院をはじめとした医療機関で研鑽を積み、眼科専門医を取得し、2015年に『北あやせよつば眼科』を開院しました。
日常的な目の不調から、レーザー白内障手術のような専門性の高い治療まで、幅広い診療を提供しています。0歳の乳児からご高齢の方まで対応し、現在では遠方からも多くの患者様にご来院いただいています。
地域の皆さまが安心して質の高い医療を受けられるよう、一人ひとりの「目のかかりつけ医」として、誠実に診療にあたってまいります。
タッチアップとは?

タッチアップとは、白内障手術後に残った近視・遠視・乱視といった屈折異常による見えにくさを解消するためのレーシック治療です。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズ(IOL)を挿入します。
しかし、白内障手術後の見え方は、角膜形状や後面角膜の影響、術後のわずかな変化など“個体差による要因”で、近視・遠視・乱視がわずかに残ることがあります。
これは必ずしも手術の不備を意味するものではありません。
タッチアップは、角膜の形状をレーザーで微調整し、度数を調整して視力を矯正する方法です。
再手術をしなくても、少ない負担で見え方を改善できるでしょう。
施術の目的
タッチアップは、白内障手術後に残った乱視を含む屈折誤差を角膜レーザーで微調整し、見え方の質を整える治療です。
トーリックIOLの入れ替えが現実的でない場合でも、角膜側の調整で体への負担を抑えつつ改善を目指せます。
白内障手術では、術前に度数を計算して眼内レンズ(IOL)を挿入しますが、眼の状態の個人差や術前の検査の精度などが原因で、予測した度数と実際の度数に微妙な誤差が生じる場合があります。
その結果、ピントが合いにくかったり、視界がぼやけたりするほか、夜間に光の見え方に異常を感じるといった不具合を感じることがあります。
タッチアップを受ければ、そのような術後の見えにくさの改善が期待できるでしょう。
期待できる効果
白内障手術後、「遠くは見えるが近くが見えにくい」「ピントが微妙に合わない」「視界が常にぼやけている」「夜間に光がギラギラしてまぶしすぎる」といった不満を抱える方もいらっしゃるでしょう。
これらは全て、術後にわずかな度数のズレが生じたために起こる症状です。
タッチアップによって治療すれば、こうした術後の不満を解消し、より自然でクリアな見え方を取り戻せる可能性があります。
再手術による眼内レンズ(IOL)の交換など大きな負担を伴う方法に比べ、短時間かつ少ない負担で行える点も魅力です。
タッチアップの手術内容
タッチアップは、白内障手術後に残った度数のズレをレーザーで微調整する手術です。
具体的には、「エキシマレーザー」というレーザーで、角膜の表面のカーブをわずかに削って屈折異常を調整します。
手術は点眼麻酔を用いて行われるので、痛みはほとんどなく、数分〜十数分程度と短時間で終了します。
体への負担が少なく、日帰りで受けられる治療です。
そもそも修正手術がなぜ必要になる?

実は近年、白内障手術後の見え方について不満を覚える人が増えつつあります。
その理由としては、主に次の2点が挙げられます。
- 眼内レンズ(IOL)の特性
- まれに起きる度数のズレ
以下では、それぞれについて詳しく解説します。
眼内レンズ(IOL)の特性
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズ(IOL)を挿入します。
しかし、IOLには構造上の特性があり、必ずしも以前と同じ見え方を再現できるわけではありません。
特に単焦点レンズは、遠くか近くかのどちらか一方にしかピントを合わせられないため、以前は裸眼で見えていた距離が見えにくくなります。
その結果、手術後に遠くを見たり、手元で作業をしたりする際にメガネが必要になる可能性もあるでしょう。
また、多焦点眼内レンズを選択したとしても、納得できる見え方になるとは限りません。
元々硝子体に混濁があれば、ぼやけた見え方になりますし、ドライアイの方の場合、眼の表層の不正のために見えにくかったりする可能性もあります。
さらに、黄斑疾患や緑内障の方が回折型の多焦点眼内レンズを使用すれば、コントラストが低いために「見えにくい」と感じやすいでしょう。
多焦点眼内レンズが向かないにもかかわらず、適用した結果、見え方に不満を覚え、手術による修正が必要になるケースも少なくありません。
まれに起きる度数のズレ
白内障手術後、術前の計算通りに視力が出ず、度数のズレが生じることがまれにあります。
これは「残存屈折誤差」と呼ばれ、術前の眼内レンズ(IOL)度数計算に微妙な誤差があったり、手術後に角膜形状が変化したりすることが原因です。
また、眼の長さ(眼軸)や角膜のカーブなどの眼内レンズの度数を決定する数値が、標準的な範囲から外れる場合も、度数の算出が難しいためにズレが起こりやすいでしょう。
このような度数のズレが、日常生活での見えにくさや違和感につながります。
その他の治療法との比較

白内障手術後の見え方に不満がある場合に行う治療法のうち、タッチアップ以外の方法としては以下の2つが挙げられます。
どの方法が適切かは“原因が角膜側かIOL側か”で変わります。
IOLの回転が主因なら再位置調整やアドオンを、角膜由来の乱視が主因ならタッチアップが候補になります。
当院では検査結果を踏まえ、最適な順番でご提案します。
- 眼内レンズ(IOL)の交換
-
アドオンレンズ(眼内レンズ(IOL)の追加)
ここでは、これらの治療法について詳しく説明する他、タッチアップのデメリットについても紹介します。
眼内レンズ(IOL)の交換
白内障手術後に視力や度数に大きな不具合がある場合の治療法の一つが、眼内レンズ(IOL)の交換です。
IOLは挿入時には、折り畳まれた状態にあり、挿入後に眼内で広がって固定されるものです。
しかし、摘出時には折り畳めません。
そのため、挿入時よりも切開の幅を広げなければならず、その分リスクも高まります。
さらに、眼内で細かく切ってから取り出す必要もあり、感染症や炎症などのリスクもあります。
その他、IOLを挿入してから時間が経過していると、レンズと周囲の組織が癒着しているため、摘出の際に眼内の組織を傷つけてしまう可能性もあるでしょう。
以上のようなリスクがあるため、IOLの交換には慎重な判断が求められます。
もちろん、状況によっては有効な場合もありますが、度数のズレが比較的軽度であれば、より体への負担が少ないタッチアップでの矯正が推奨されるでしょう。
アドオンレンズ(眼内レンズ(IOL)の追加)
アドオンレンズとは、白内障手術で挿入した眼内レンズ(IOL)の上に、追加で重ねて入れるレンズです。
術後に生じた度数のズレや近視や遠視、乱視の矯正を目的に用いられます。
眼内レンズ(IOL)を交換する必要がないため、初回手術から時間が経過し、眼内レンズと周囲の組織が癒着してしまってからでも有効です。
IOLの交換ほど複雑な手術でもないため、リスクも大きくありません。
ただし、眼内にレンズが2枚挿入されるため、見え方の質は劣る可能性はあります。
タッチアップのデメリット

タッチアップは体への負担が少なく有効な方法ですが、以下のようなデメリットもあります。
- 角膜をレーザーで削るため、角膜の厚みが十分にない場合は施術ができない
- 角膜の表面を薄く切り開くため、衝撃に弱くなる
- 術後の視力が安定するまでに時間がかかる場合がある
-
ドライアイやハロー・グレア(光のにじみやまぶしさ)などの症状が出ることもある
以上のデメリットも理解しながら、適応の有無を事前にしっかりと確認することが大切です。
タッチアップが適している人と適していない人

タッチアップは全ての人に適するわけではありません。適している人、適していない人をまとめると次のとおりです。
タッチアップが適している人 |
・最初の手術から3ヵ月以上経過している人 ・白内障手術後に近視や遠視、乱視の症状がある人 ・他に眼の疾患がない人 ・より負担の少ない方法で術後の見えにくさを改善したい人 ・角膜の厚みや形状が施術に適していると診断された人 ・他院で白内障手術を受け、乱視だけが残っている方 ・トーリックIOLへの入れ替えが現実的でなく、角膜側の調整を優先したい方 |
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タッチアップが適していない人 |
・最初の手術から3ヵ月が経過していない人 ・度数のズレが大きい人 ・角膜が薄い、または形状が不規則な人 ・重度のドライアイや角膜疾患などがある人 ・他に眼の疾患がある人 ・主因がIOL(位置/回転/度数)と判断され、IOL側の処置が合理的な方 |
乱視に特化したタッチアップ
白内障手術後の「見えにくさ」の中でも、乱視が残っていることが原因のケースは少なくありません。
乱視の原因となるものには次があります。
- 角膜のカーブの偏りによるもの(角膜由来)
- トーリックIOLの位置や度数などレンズ側の要因(IOL由来)
- 創傷の影響やドライアイなどによる一時的変化
当院では、まず乱視の原因評価を丁寧に行い、IOL側が主因か、角膜側が主因かを見極めたうえで、体への負担と効果のバランスが良い方法をご提案します。
乱視の原因を見極める(角膜由来/IOL由来/術後変化)
乱視は同じ「見えにくさ」に見えても、背景は一様ではありません。
- 角膜由来: 角膜の前面・後面のカーブ差、角膜乱視軸のズレ、表層不正(上皮のムラ、角膜表面の凹凸)など
- IOL由来:
トーリックIOLの回転(軸ズレ)や度数ミスマッチなど。
わずかな回転でも乱視矯正効果が下がることがあります。 - 術後変化・その他: 創傷の影響に由来する術後乱視(SIA)、ドライアイ、黄斑や視神経の状態による“見え方の質”の低下など
以下のような検査を組み合わせて原因を特定します。
- 角膜形状解析(トポグラフィ/トモグラフィ)で前面・後面角膜を評価
- 角膜曲率(ケラトメトリー)、屈折検査で度数と乱視軸を確認
- IOL位置や軸の確認、前嚢の状態などのスリット検査
- 涙液検査や角膜上皮の状態チェック(ドライアイ関連)
原因が分かると、「IOL側を優先して整えるべきか」「角膜側のタッチアップが有効か」の判断が明確になります。
治療の選び分け(乱視矯正の選択肢)
基本方針は原因に合わせて最短距離で整える”ことです。
- IOL関連が主因:トーリックIOLの再位置調整(回転)や、度数ミスマッチが疑われる場合はアドオンレンズの併用を検討します。
IOL交換は有効なこともありますが、負担やリスクが増えるため慎重に判断します。 - 角膜由来が主因:角膜レーザーで乱視軸と度数を微調整するタッチアップが適しています。
既存IOLを温存しつつ、日帰り・短時間で行えるのが利点です。 - 要因が混在:まずドライアイや表層不正など可逆的因子を整え、そのうえで最小限のタッチアップまたはIOL側処置を選ぶ“段階的アプローチ”をとります。
いずれの場合も、角膜の厚み・形状、安全域を守ることが最優先です。
過矯正や不正乱視を避け、左右差や生活シーン(運転・PC作業・読書など)も加味して目標度数を決めます。
きたあやせよつば眼科のタッチアップ

当院のタッチアップでは、白内障手術後に残った度数ズレを精密に矯正するため、スマートレーシック(フェムト)を採用しています。
スマートレーシックとは、フェムトセカンドレーザーを用いて極めて精度の高い角膜切開を行い、レーザー照射によって角膜の形状を調整、視力を改善する方法です。
フラップ(角膜の薄いふた)を大きく作る従来の方式よりも負担が少なく、外傷に対する耐性も高められます。
当院では豊富な症例経験と高度な設備により、一人ひとりの眼の状態に合わせた最適なタッチアップを提案し、安全性と見え方の質の両立を目指しています。
タッチアップに関するよくあるご質問
ここではタッチアップについて、よくある質問とその回答をご紹介します。
これは、手術直後は眼の組織が回復途中にあり、度数が変化しやすいためです。
時期が早すぎると再びズレが生じる可能性があるため、医師の指示に従い、適切な時期に受けましょう。
角膜を削る量には限界があるため、初回施術で削った部分や残りの角膜の厚みが十分でない場合は行えません。
角膜の厚みや形状、眼の健康状態によってはできないケースもあります。
レーザーで角膜の形状を精密に整えて、乱視の原因となる角膜のゆがみを補正できます。
ただし、乱視の度数や角膜の状態によっては十分な改善が得られない場合もあります。
医師によく相談のうえ検討しましょう。
また、角膜を削るため、一時的に視力が不安定になる他、まれではありますが、感染や炎症が起こるリスクもゼロではありません。
施術前に、医師によく相談することが大切です。
多焦点IOLや特殊デザインのレンズでは、屈折精度が向上し、近視・遠視・乱視の症状は改善する可能性が高い一方で、コントラスト感度の低下やハロー・グレア現象が起こりやすくなるリスクがあり、必ずしもタッチアップがベストな選択とは限りません。
また、乱視矯正機能付きIOLでは、度数のズレの原因が角膜ではなくレンズそのものにある場合もあり、タッチアップが適応外となるケースもあります。
きたあやせよつば眼科でのタッチアップについて
白内障手術後に、近視・遠視・乱視といった見え方の不具合を感じる場合には、幾つかの治療法があります。
中でもタッチアップは、角膜をレーザーで精密に調整し、このズレを補正する有効な方法です。
体への負担が少ない点も魅力といえます。
まず角膜形状・乱視軸・IOLの位置などを多角的に評価し、角膜側での補正が有効かを判断します。
そのうえで、当院ではスマートレーシック(フェムト)を用いた安全で高い精密な角膜調整をご提供します。
白内障手術後の見えにくさにお悩みの方は、ぜひ一度「きたあやせよつば眼科」へご相談ください。
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きたあやせよつば眼科では、WEBやLINEからのご予約を受け付けております。
事前にご予約いただくことで、当日の待ち時間を短縮し、スムーズに診療を受けていただけます。
ご予約がなくても診療は可能ですので、お気軽にご来院ください。

順天堂大学医学部を卒業後、大学病院をはじめとした医療機関で研鑽を積み、眼科専門医を取得し、2015年に『北あやせよつば眼科』を開院しました。
日常的な目の不調から、レーザー白内障手術のような専門性の高い治療まで、幅広い診療を提供しています。0歳の乳児からご高齢の方まで対応し、現在では遠方からも多くの患者様にご来院いただいています。
地域の皆さまが安心して質の高い医療を受けられるよう、一人ひとりの「目のかかりつけ医」として、誠実に診療にあたってまいります。